“有機的なスペースであり続ける” 高円寺の整体院「ボディ&フット アタマダ」院長インタビュー

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田頭院長

本日より始まりましたキャリさぽによるサロン・治療院インタビュー。

経営者やスタッフの方々に、お店のこだわり、働き方、プライベートの趣味など、幅広い内容をキャリさぽ編集部がお尋ねしていくコーナーです。

記念すべき第一回目は、高円寺の「ボディ&フット アタマダ」の院長である田頭さんにお話をうかがいました。

20代で異業種から転職、長い下積みを経て開業し、10年間経営を続けてきた田頭さん、一体どんなお店づくりをされてきたのでしょうか。

テレビマンからの転身、充実した下積み時代

-それでは、本日はよろしくお願いします。まずは開業に至った経緯をおうかがいできればと思います。もともとはテレビのディレクターをされていたんですよね?

そうですね。テレビのディレクターをやっていたこともあります。
ドキュメンタリー番組を作っていたり、海外にロケに行ったりしていました。

関わりのあった俳優さんから、休憩時間に「足揉んで、肩揉んで」とか言われてやってみたら「うまいねー」と言われて…

その時点で今の仕事をやろうと思ったわけじゃないんですが、テレビの仕事を辞めてから何をしようかなと思った時に、そうやって褒められたことで「もしかしたら才能があるかも」と頭に浮かんできたんです。

-異業種からのチャレンジですけど、そのあたりにはハードルは感じなかったんでしょうか?

みなさんそうじゃないですか。続ける人は続けるし、そうでなければ何かを探し求めて変わっていきますよね。

29歳ぐらいの時、どちらかというと僕はテレビ業界から弾き飛ばされて、何をしようかなと思って…悩みますよね。

でも「とりあえずやってみよ」と思って。

テレビの世界って、生き馬の目を抜くような競争の世界で…でも自分はそういうタイプじゃないんですよ。

やっぱり自分の得意なところというか、自分の収まるべきところに収まるべきなんだと思うんです。

テレビ業界を離れてからは、日本総合療術学院という池袋の学校で心理療法とか、東洋医学とか、ありとあらゆることを学んで、2年くらい勉強期間として過ごしていました。

赤いフォルダに収められたカルテ。「お客さまの”血”を取扱うくらい大事に考えています。」と田頭さん

赤いフォルダに収められたカルテ。「お客さまの”血”を取扱うくらい大事に考えています。」と田頭さん

-その時から開業は考えていたんですか?

開業はずっとしようと思っていました。

まずは勉強をして、お客様をお迎えできる最低レベルになって、そこからお店で働き始めて、ようやく修行を始めたことになります。

スポーツクラブの中でベッド一台だけでやったり、学院で併設されている治療院で仕事をしたり、整骨院やそれ以外にもあちこちでやりました。6~7年くらい続けていました。

開業までそのぐらいかかったのも、やっぱり資金の面もありました。 修行の間は、大手はどうやって運営しているのか、などを色々勉強していました。

-テレビ時代と比べて、治療院などで働いていた時はどうでしたか?

充実感があるんですよ…

テレビの仕事って、企画して、局から承認もらって、取材して、編集して…と番組を作るために膨大な作業があるんですよね。

できた作品については、評価いただいていたんですけど、すごい人たちがたくさんいるんですよ。

その中で自分が頭一個飛び出るにはとても難しいんですよね。そういったことにやっぱりある種の焦燥感や、違和感を覚えていて…

この仕事は自分がしたことがダイレクトに返ってくるじゃないですか。そこがいちばん幸せです。

(お客さんの)顔を見ればわかるじゃないですか、良かったか悪かったかというのは。

自分がテレビやっていた時はずっと緊張していて背中が痛くて、でもここの世界に来てからは心地よいです。

手や指は疲れますし、大変は大変ですけど。笑

2年間探し続けた、やりたいことができる場所

-どうしてこの高円寺という場所を選ばれたのでしょうか?

以前、恵比寿で働いていた頃の仲の良い同僚が高円寺を勧めてくれたんですよ。

実はすでに2年ぐらい物件を探し回っていて、予算、設備、アクセスなんかを見て、たくさん調べていました。

ある日その同僚から、「高円寺は、何か新しいことをしようとする人を受け入れてくれる空気がある。田頭さんがやりたがっていることを受け入れてくれるよ」と教えてくれて。で、これも縁だな、と。

その代わり、切られる時はバッサリ切られる、という土壌があるというのも後から知ったのですが。笑。

それに、こういうお店にしたいというイメージはあって、なるべく静かに心地よくしたいというのがありました。物理的に洗濯機や乾燥機をどこに置けるか、水周りもどうか、などもとても大事なところでした。

同僚からの勧め、アクセス、設備、予算などがうまく合わさって、高円寺で開業してから11月で丸10年になります。

10年続けていくのはやっぱり大変でしたけど、今はグイグイ来てるかなと、そういった実感はあります。

カフェのように落ち着いた雰囲気の待合室

カフェのように落ち着いた雰囲気の待合室

アタマダという有機的な空間

-内装が整体院とは思えないような雰囲気ですね。

カフェのような整体院、とサイトにもありますけど、「自分だったらこういうところで施術を受けたいな」と思える空間を具現化しただけなんですよね。

「自分だったら良いんですけど、お客様はどうですか?」というような。

ただ単に楽しくて、どんどん付け足していった感じです。 でも、お客様も店内に入ってもらえば喜んでもらえますね。

(近くの壁を指して)ここの壁は自分で塗ったんです。

イギリスの「ファローアンドボール」というペンキで、 無臭でホルムアルデヒドが出なくて体に良いことに加えて、日本にはない色が出ます。また近々塗ろうかなあと思っています。

「サロン」というのか、「院」というのか、悩んだんですけど、 整体院でこの雰囲気というのは、10年以上前では、あまりないのかなと思っていました。

勉強し始めた頃から、ずっとこのヨーロッパのプチホテルのようなイメージを持っていましたね。

この空間を好きな人、自分と同じような波長の人が一緒に働くスタッフ、そういった人たちの中にいるのも心地よいと思っています。

(入り口のドアから)店内にはアンティーク・レトロなデザインが散りばめられている

(入り口のドアから)店内にはアンティーク・レトロなデザインが散りばめられている

尖ったことをやりたかったというのもあったんですけど、柔らかいとんがりのようなものを目指していたんです。
本当のアンティークではないんですけど…雰囲気ですよね。

高円寺に来たんだけど、高円寺にはない空間、を目指して、というのを狙いました。

ここは典型的な雑居ビルの6階ですし、掃き溜めに鶴ではないけれど、これから鶴になろうとしている段階です。あ、少し語弊がありますね。笑

-やっぱりスタッフの方もこういった雰囲気が良いと思われるんですね。

(ここで田頭さん、受付にいたスタッフの土谷さんに「どう思う?」と尋ねる)

土谷さん:面接の時から、良いなと思っていました。居心地が良いので、気持ちの面で落ち着けますね。院らしくまっさらな空間も良いですけど、自分はこっちの方が合っています。

-ひとつ気になったのですが、お店では牛をよく見かけます。こちらは何かのモチーフなのでしょうか?

店内のいたるところで見かける牛のグッズ

店内のいたるところで見かける牛のグッズ

ああ、「アタマダくん」ですね。たまたま雑貨屋さんで見つけて買ってきたんです。
「この子いいじゃない」と気に入ってしまって、これでうまいことデザインしてもらえませんかと デザイナーの方に頼んで、店のロゴに加えてもらったんですよね。

時々「アタマダさん」だったり、「アタマダくん」だったり、呼び名はブレてますけど。笑

アタマダといえば、「アタマダくん」というイメージを持ってもらえたらな、と。

-おだやかな感じで、親近感が湧きますよね。

牛って、気持ちの良い、広い牧草地で牧草をついばんで、子牛にミルクを与えて、牧歌的なところがあります。

さっき出たテレビの仕事の話じゃないですけど、激しい世界とは真逆の性格を持っていて、「ゆったりとした牛のようにのんびりとしても良いじゃない」とそういう意味合いなんですよ。

放牧するように、スタッフに任せていく

-スタッフとのコミュニケーションの話に移ります。スタッフと円滑に仕事を進めるために意識されていることはありますか?

まあ、オープン当初は自分のお店はこういう風にしたいんだ、っていうのがとても強かったんですよ。それに合わないスタッフには、「いや、これはこうしてよ」とよく言っていたんですよ。

でも、ある時、「いや、これは違うな、そうやって押し付けるもんじゃないな」と。スタッフも居心地悪いんじゃないかって。

スタッフとの出会いって縁みたいなものだと思うんですよ。

だからもう元々良い人が来ると思ってるんですよね。そうすれば良い人が来るんですよ。あとはあんまり考えないっていうか。笑

周りが勝手に色々やってくれますよ。

そういうと何もやっていないようですけど、スタッフに預けた方が、意図的にあれやってこれやってというよりも、「はー、そっかあ…」てなることが多いんですよね。

やっぱり自分が何年も下積み経験があったとしても大したことなくて、新しいスタッフから新しいことを教わることもよくあるんですよね。

それこそ有機的に、その場で生まれる化学反応みたいなものを大事にした方が、 この場、このアタマダというスペースが動き始めるんじゃないかと、そういうのを大事にしていきたいんですよね。

アタマダという有機体を、解放する…というか放牧するような感じなんですよね。そういう場であれば良いな、といつも思っています。

あ、放牧はアタマダジョークです。笑

-なるほど。その場合、未経験の方も同様に放牧されるのでしょうか…?

手取り足取りだと思うんですけど、ベースは作って、あとはお客さんとその人の一対一の世界ですから。

成長のスピードは人それぞれですけど、止むを得ず無理させることもたまにあります。 その度にスタッフに怖い顔されるんですけどね。笑

それでも自分含め、しっかり見てあげています。

スタッフがいつのまにかデザインしていたというお手洗いのガイド

スタッフがいつのまにかデザインしていたというお手洗いのガイド

-ここでガラッとお話が変わりますけど、田頭さんの趣味は何ですか?

趣味は旅行です。アジアが好きなんですよね。ほっとするんです。

ちなみに、アタマダという仕事場に来ると、僕はいつも癒されるんですよ。自分で好きなようにやってるんで、ほんとに毎日癒やされてます。

それでも非日常も好きだったりするんで、職場とはまた違った場にいたいんですよね。

知らないところに行ったりすることで、「ああ、この人たちも一生懸命頑張っているな、自分も頑張ろう」と思うんですよ。

-ちなみに、旅行先で一番よかった国はどこですか?

少し変わりますけど、よかった、というより、いちばん肩の力が抜けた国は、タイですね。

食べ物が美味しいし、人ものんびりしている。やっぱり自分と同じ波長、そういったものを望んでいるんですよね。

仕事を続けていく原動力、そして「アタマダ」のこれから

-今のお仕事を続けられる原動力・モチベーションってなんでしょうか?

いやあ、これはもう「お客様に喜んでもらえる」それだけじゃないでしょうか。

もう一つは、「出会い」じゃないでしょうか。志を同じくする人と出会うこと。

自分にとっては、ここがそういう場になっているので、話したりするのは楽しいし、癒しの場です。 原動力っていうほど大げさなものではないんですよ。

生きてく上で、何か違うことをするとエネルギーが必要じゃないですか。

自分にたくさんのエネルギーがあればやるんでしょうけど、自分はそういうタイプではないので、だから違うものをやろうと思ってもできないし…

結局それって「今いる場所で自分のできることをやりなさい」と言われてるんじゃないかと思うんです。

あるイメージを持って日々を過ごしていたらこうなっちゃった、そういうのが僕は大事だと思うんですよね。

心地良いし、癒されるし、楽しいし、無理なくできるし、なんとかやれているし、それでいいんじゃないのかなって。

経営者としての仕事をやりすぎちゃうと、先ほどの有機体の話じゃないですけど、また違うものになってしまう気がしますね。

-あくまで「有機的に」、素敵ですね。では、アタマダの将来についてはどのようにお考えなのでしょうか?

自然体で変わらず…ですけど、考え方が変わったら変わったで良いんじゃないでしょうか。

もちろんお客様からお金をいただく経済活動をしているわけですし、売上を大きくしたいなあというのもありますけど、 このお店ではそういう風にしたくないなあ、というのもあって、いつも綱引きをしています。笑

でも綱引きした後で、ちゃんとこれまでの軸に戻ってくるんです。

そういった一貫したものを持ち続けることがアタマダの魅力に繋がっていく…というのを信じているんですよね。

手作りのハロウィーンの飾りと共に出迎えてくれた土谷さん(左)と田頭さん(右)

手作りのハロウィーンの飾りと共に出迎えてくれた土谷さん(左)と田頭さん(右)

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